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『NARITA ITTETSU to the BAR』完全改訂版
- 切り絵作家 成田一徹。一軒のバーの扉を開けたことから、彼の切り絵作家としての人生が始まりました。バーやバーテンダー、街の風景、職人など幅広いテーマで切り描いた作品は、どれも細かな描写、人々の豊かな表情、独創的な構図から見る人の心をつかんで離しません。
雑誌等でいくつもの連載を抱えるほど多忙であった成田氏は、2012年10月、脳溢血により突然この世を去りました。
彼の生前の願いを叶えるため、2014年にバーをテーマに切り描いた『NARITA ITTETSU to the BAR』を有志により刊行。現在は絶版となり手に入れることができなくなってしまいました。
成田氏の作品を画集として一人でも多くのバーテンダーやバーファンにお届けしたい、そんな想いから、ご家族や関係者の皆様のご協力のもと、完全改訂版をこの度BAR TIMESで販売することといたしました。
再版にあたって、表紙をソフトカバーに変え重さを軽減したほか、中身も若干の仕様変更をしております。また、店舗情報を修正・更新したほか、ページ数を増やし、23の切り絵を新たに加え、総数271点を収録いたしました。
新たに加わった23点の作品は下記になります。
・2nd RADIO (東京)1990年代前半
・Bar Shanks(東京)2005年
・KAZZ(東京)2004年
・Bar ラ・ポポット(東京)2005年
・Bar Noble(横浜)2005年
・Bar GLORY大倉山(横浜)2000年
・Bar Eau de Vie(神奈川・相模原)2004年
・Paris(横浜)2005年頃
・Bar SAKAMOTO(埼玉)2004年
・Cooper’s(埼玉・春日部)2005年
・EAU・DE・VIE Hills Top(埼玉)2004年
・Cocktail Bar Point(群馬・高崎)2005年
・Bar 白馬館(富山)2012年
・Bar Ron Cana(愛知・豊田)2003年
・BAROSSA(岐阜)2004年
・わか屋(大阪)1994年
・Bar TEN(大阪)1992年
・サルーンバー・ムルソー(大阪)1994年
・Just a Little Bit(大阪)1992年
・バードランド(京都)1993年
・Bar玄(京都)1992年
・Bar Blew(兵庫・宝塚)1992年
・Pub el MOROCCO(愛媛・松山)2005年 -
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本書編纂者が記す 切り絵作家 成田一徹氏とは
- 生前の成田さんと親交が深く、本書編纂者のひとりである荒川英二さん(バーUK/大阪)は、成田氏の人柄を前書きにこう記しています。
「一昨年(2012年)の10月、突然天に召された彼は、プロの切り絵作家として独立・上京して以来、バーの切り絵をライフワークとし続けた。
友人と自費出版した『酒場の絵本』(1982年刊)を含め、生涯に5冊のバーの切り絵を紹介する本を著した。いずれも世の人々、とりわけバーを愛する人たち、バー経営者から好意的に受け入れられ、バー業界は成田一徹というアーティストの登場を大いに喜んだ。
酒呑みとしての一徹さんは、バーという空間(場所)と、バーテンダーたちをこよなく愛した。とりわけ、バーのマスター、バーテンダーたちとの会話を好んだ。「バーは酒を飲みに行くというより、バーテンダーに会って話をしたいために行く」。一徹さんはしばしば、そう語っていた。心底には、バーテンダーへの尊敬があった。だから「バーテン」と呼ぶ客を嫌い、たしなめた。
一徹さんの切り絵が世に認知されてゆくにつれて、バー業界の反応も変わっていった。自分の店の壁に一徹さんの切り絵を飾ることがステイタスとなった。オーナー・バーテンダーたちは、「いつか自分の店を一徹さんに切り絵にしてもらう」ことを願って腕を磨き、競った(ただし彼は、どんなにギャラを積まれても、自分が気に入った店、マスターしか切らなかった)。
改めて、一徹さんのバーの切り絵を見て思うのは、「成田一徹は決して天才肌の人ではなく、努力の人だった」ということだ。カッティング技術を上げるために、「バーで飲んでいる以外はほとんど机に向かっている」と本人が言ったくらい、驚くべき量の仕事を休む間もなく次々とこなした。晩年のカッティング・ラインの究極のキレは、長年の努力と鍛錬のたまものである。
白い紙を切って黒い紙の上に貼って見せるという「逆転の発想」を切り絵で使ったのは、おそらく一徹さんが最初だと思うが、他にも、わざと汚く(黒っぽく)コピーした紙を使って切ったり、金網とブラシでの霧吹き(スパッタリング)という手法を効果的に使ったり、金粉・銀粉や胡粉(白)をアクセントにしたり・・・と、研究熱心は他のアーティストの比ではなかった。彼はやはり努力の人なのである。」
(初版前書きより抜粋) -
- ↑ クール 〈東京〉1993年 現在閉店
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- ↑ 成田氏はバーテンダーそのものも切り絵にした。左から/十三トリス 江川清子氏(大阪)/北野クラブ 中野司氏(神戸)/ケルン 井山計一氏(山形)/オールドインペリアルバー 石原彰氏(帝国ホテル・東京)
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生前に叶わなかった『to the BAR』改訂版を有志の手で
- 1998年に出版されたバーやバーテンダーを切り描いた単行本『to the BAR』。成田氏は亡くなる数年前から『to the BAR』の改訂版を出したいと語っていました。掲載された店のなかには、移転や閉店した店も少なくなく、もう一度きちんとした形で改訂版を出したいと願い続けていたそうです。しかし、数々の雑誌に連載を持ち、多忙を極めた彼はついに願いを叶えることができず、この世を去りました。
そんな成田氏の夢を実現させようと、ご家族や関係者が集まり、2014年に出版されたのが『NARITA ITTETSU to the BAR』です。「どうせ作るなら、一徹のバーの切り絵の集大成となるような、立派な本をつくりたい」と、皆、意見が一致したといいます。
また、改訂版を出版するにあたり、バーガイド的な要素は極力排除したとか。ガイドブックとしてよりも画集、作品集として、純粋に切り絵を芸術、アートとして楽しんでほしいからと、荒川さんは本書に記しています。 -
「バーは人なり」。成田氏のご家族が寄せる本書への願い
- 成田氏の奥様であり、Office Ittetsuの代表を務める成田素子さんは、本書初版のあとがきにこう記しています。
「勤め帰りに立ち寄った神戸の一軒のバーから、成田一徹のバー巡りの旅は始まりました。
いくつかのバーを訪ね歩くうちに、その情景を絵にとどめたいという思いに駆られ、エッチングやペン画も試しましたが、「切り絵という手法とバーのモノトーンの世界がピシャリとはまった」。
この出会いから、彼は切り絵を生涯の仕事としました。
コウベハイボール、ルル、ギルビー、マダム・マルソー・・・。その頃何度も作品に描いたこれらの名店は、今はもうありません。
一徹は、いつ訪れても変わることなく迎えてくれるバーという空間に魅せられ、また一方で、時を経て失われていく場所でもあるバーの儚(はかな)さをも愛しました。
全国の名バーと名バーテンダーの美しい姿が、彼の作品に遺されました。
成田一徹は、全国の数々のバーを訪ね、そこで幸せな出会いを重ねました。
「バーは人なり」。
彼がいつも口にしていた言葉です。少し重い本かもしれませんが、本書を手にバーにお出かけ下さい。きっと素敵な出会いが待っていることと信じています。
私たちはこの作品集の出版によって、成田一徹の作品が多くの方々の胸に届くとともに、彼の愛した“切り絵”が、いつの日か世界のアートシーンを闊歩する時が訪れることを心から願っています。」 -
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- ↑ 成田氏が何度も作品に描いたという「ギルビー」(左)と「コウベハイボール」(右)。
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先行予約特典としてお得な価格でご提供!書店では手に入らない貴重な一冊に
- 今回刊行する『NARITA ITTETSU to the BAR』は、2014年に出版されたものの再版となりますが、これまで未収録であった作品を23点新たに加えています。
なお、本書はBAR TIMESのみでの取扱いとなり、書店での販売はいたしません。2,000冊限定で本サイト「BAR TIMES LAB」にて先行予約を承ります。先行予約の特典として、本体価格1冊2700円のところを2500円(税・送料別)にて販売いたします。ご購入冊数に応じてさらにお得な価格にてご提供いたします。 -
商品詳細
- 著者:成田一徹
サイズ:264×210mm
ページ数:256ページ
発行形態:単行本
発行元:BAR TIMES(株式会社北澤企画事務所)
※仕様は変更になる場合がございます。予めご了承ください。 -
成田一徹 プロフィール
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- ↑ 月刊「清流」より@上田佑勢
1949年神戸生まれ。サラリーマン生活のかたわら切り絵に目覚め、88年に上京。切り絵作家として独立しました。BARの空間をモチーフにしたモノクロームの切り絵をライフワークとしつつ、新聞、雑誌、書籍を中心に、街の風景や市井に暮らす人々、職人の仕事や生き様など多彩なテーマで作品を発表。エッセイストとしても、軽妙で味わい深い文書にファンも多く、各地で個展、グループ展を多数開催しました。講談社フェーマススクールズ・インストラクターも長くつとめた。2012年10月、脳出血で急逝。
著書に『to the Bar 日本のBAR 74選』 (朝日新聞社)『カウンターの中から』(クリエテ関西)『東京シルエット』(創森社)『The Cigger Story-葉巻をめぐる偉人伝-』 (集英社)『成田一徹の切り絵入門』 (誠文堂新光社)『あの店に会いに行く』(中央公論社)『神戸の残り香』 『新・神戸の残り香』(神戸新聞総合出版センター)『NARITA ITTETSU to the BAR』(神戸新聞総合出版センター)など多数。